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Hexabase コンテナサービス開発レポート

2025年06月16日

2025年6月6日のSkill Fridayでは、Hexabase CEOの岩崎氏が「AIドリブン開発ツール」に続いて、自社の新プロダクトである“コンテナサービス”に関する現在の開発状況を詳細に報告しました。本記事では、その内容を整理し、背景・技術スタック・進捗・今後の展望に分けてお伝えします。


1. 背景と狙い

・Hexabase のこれまで

Hexabaseはもともとマルチテナント型バックエンドサービスを提供してきました。これにより、ユーザーはクラウド上で各種アプリケーションを迅速に開発・運用できる基盤を得ています。
しかし近年、コンテナ技術(Kubernetesなど)を活用した “クラウドネイティブ” な開発・運用が標準化しつつあり、顧客企業や開発チームからはより細かいレベルでクラウド環境を制御したいというニーズが高まってきました。
そこで、Hexabaseは「自社の権限管理・ドメインモデルをそのままに、コンテナを自由自在に動かせるサービス」を提供することを決定。インフィニクラウド上にK3s(軽量なKubernetes)を導入し、Hexabaseの既存のユーザー権限基盤と連携することで、開発者や運用者が“使い慣れたHexabase UI”を通してコンテナ環境をフルコントロールできる仕組みを構築しようとしています。

・ビジネス上の狙い

1,導入コストの削減

従来、Kubernetes環境を一から構築しようとすると、各種マニフェスト作成やRBAC設定、クラスタ運用監視の手間が膨大になります。Hexabase コンテナサービスではこの運用負荷を大きく減らし、顧客は「ボタンひとつでクラスタを立ち上げ、権限管理も自動で設定される」 UXを実現します。

2,収益基盤の多様化

マルチテナント型バックエンド+コンテナホスティングという形で、サブスクリプション収益を拡張。加えて、オプションサービスとして「権限管理カスタマイズ」「CI/CDパイプライン構築」「AIエージェントによる自動運用サポート」などを組み合わせることで、LTV向上を目指します。

3,DX支援の強化

コンテナ技術の導入が進む中で、「Kubernetesを使った開発がまだハードル高い」という企業は少なくありません。本サービスにより「Hexabase のWebコンソールを介して、権限・ネットワークポリシーなどを自動設定してくれる」仕組みを提供することで、DX推進を強力に後押しします。

2. 技術スタックと設計方針

1,インフラ基盤:インフィニクラウド上のK3s

  • インフィニクラウド(国内データセンターを利用できるIaaS)上でK3sクラスタを構築。K3sは軽量Kubernetesとして、リソース負荷を抑えつつ標準的なKubernetes APIを利用できる点が採用の決め手です。
  • クラスタ構築時に、HexabaseのIDプロバイダ(OAuth2ベースの認証基盤)と連携し、各ユーザーがどの名前空間(namespace)にアクセスできるかを自動的にマッピングする仕組みを検討中。

2,ドメイン駆動設計(DDD)をベースにしたマイクロサービス構造

  • 「モデル → レポジトリ → サービス → コントローラ」というレイヤードアーキテクチャを採用。各レイヤーは責務を明確化し、テストコードも含めて共通のベースラインを整えます。
  • ドメインモデルには「クラスター管理」「アプリケーションデプロイ」「権限設定」「アラート監視」などの概念を定義し、それぞれのリポジトリやサービスで操作できるように整理。藤田氏らの要望を反映し、レイヤーごとに必要なテストケースも記述しています。

3,権限管理とRBAC

  • Hexabaseが従来から持つ「ユーザー→ロール→権限」の管理モデルを踏襲しつつ、KubernetesのRoleBinding/ClusterRoleBindingと連携。
  • 開発初期段階では「どのユーザーがどの名前空間で何を許可されているか」を、Hexabaseの管理画面から設定すると自動でK3sクラスタ上にRBAC設定が反映される仕組みを実装中です。
  • これにより、開発チームや運用チームは「社内のLDAPやADではなく、Hexabaseに登録されたユーザー情報でそのまま権限を管理できる」メリットがあります。

4,CI/CDパイプラインの整備

  • TerraformやHelmを使ったマニフェスト生成に加え、GitHub ActionsやCircleCIと連携して自動デプロイフローを構築予定。
  • 現在は「クラスタ構成ファイルの自動生成 → テスト → デプロイ」という流れに向けた最初の検証を実施中で、すでに“ドメインモデル→リポジトリ→テスト”部分は動作確認を完了しています。

3. 現在の進捗状況

・設計フェーズ(完了)

  1. ドメインモデルやエンティティ定義は一通り完成し、藤田氏らと擦り合わせてリファクタリングを実施。
  2. 各レイヤー(モデル/リポジトリ/サービス/コントローラ)のコード骨組みを生成し、ユニットテストを作成済み。
  3. RBAC連携に関する仕様をまとめ、K3sクラスター上での動作原理を検証。

・開発フェーズ(進行中)

1,リファクタリング→動作確認

昨日・今日の1日で発生していた多数のコンパイルエラーやテスト失敗はほぼ解消し、ユニットテストが通る状態に。

2,CI/CD連携の検証

GitHubリポジトリ上で「プッシュ時に自動でビルド→テスト→イメージ作成→K3sクラスタにデプロイ」までの一連の流れを組み込み中。現在はステージング環境でのみ動作しており、本番環境向けの設定は最終段階。

3,UI連携部分の実装

Hexabaseの管理コンソールに「K3sクラスタ作成」「名前空間ごとの権限設定」「デプロイ状況確認」などのメニューを追加する作業中。画面モックは完成しており、バックエンドと結合テストを近日中に実施予定。

・テスト環境でのトライアル

  1. インフィニクラウド上に立ち上げたK3sクラスタで、ダミーアプリケーションをデプロイ→権限設定→サービス公開までを実演。
  2. 「開発チームAは名前空間Aにだけアクセス可能」「運用チームBは名前空間A・Bをまたいで参照可能」など、RBACが正しく反映されることを確認。
  3. 現状の課題としては「マルチノード化したときのネットワーク遅延」や「ストレージクラスの自動プロビジョニング」あたりを次段階でクリアする必要がありますが、基本的な機能は問題なく動作しています。

4. 今後のスケジュールと展望

1,内部レビューとPR提出(~6月中旬)

  • 現在進行中の機能実装とテストが完了次第、社内エンジニアチームによるレビューを実施。
  • フィードバックを反映したうえで、6月中旬を目標に最初のPRをマージし、ベータ版へ向けた準備を進める予定です。

2,ベータ版リリース(7月上旬~中旬)

  • ベータ版では、限られた顧客を対象にトライアルを実施。
  • 導入教育(ハンズオン)やドキュメント整備を行い、顧客からのフィードバックを収集します。特に「UIの使いやすさ」「デプロイまでのステップのわかりやすさ」「権限設定の柔軟性」に関する声を重点的に取り込み、改善を図る予定です。

3,商用化&オプションサービス展開(8月以降)

  • 正式リリース後は「サブスクリプション」「クラスタ管理オプション」「運用サポートプラン(定期アップデート・セキュリティパッチ適用など)」を提供。
  • さらに、「AIエージェント連携オプション」を検討しており、AIに「新しいマイクロサービスを追加してください」「不要になったポッドを自動でスケールダウンしてください」といった指示を送るだけで、バックエンド全体を一元管理できる機能を将来的に提供予定です。

5. まとめ:開発の“次元”が変わる瞬間へ

今回のSkill Fridayにおける報告を通じて明らかになったのは、Hexabaseが「従来のバックエンドサービス+コンテナホスティング」という新しい事業モデルを志向し、かつそれを短期間でカタチにしようとしている点です。K3sとHexabaseの権限管理を組み合わせることで、お客様は「細かいマニフェストを書くことなく」「管理コンソール上の数クリックで」クラスタを立ち上げ、セキュアに運用できる環境を手に入れることが可能になるでしょう。

今後は「クラウドコスト最適化」「マルチリージョンサポート」「AIエージェントとの連携機能拡充」といったさらなる機能強化が計画されており、これによってHexabaseは「単なるマルチテナント型バックエンド」から脱却し、“Kubernetesベースのマネージドプラットフォーム”として成長を遂げていくことが見込まれます。6月中旬のベータ版リリースに向けて、開発とドキュメント整備を急ぐフェーズに入りましたので、引き続き注目していただければ幸いです。


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