2024年1月31日
AIによる開発補助分野とその代表的サービスまとめ
COLUMN
2022年3月11日
タグ:DX
企業向けITの世界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が注目を集めています。とくに経済産業省が2018年から発表してきたレポートが大きな影響を与えています。
これまでDXレポートは、複数のバージョンが発表されてきました。コロナ禍など社会環境の変化もあり、レポートが伝えようとするメッセージも少しづつ変わってきたように思います。
そこで、これらDXレポートをあらためて通読して、その言わんとしていることを確認してみました。
ニュースリリースの冒頭で、DXレポートを次のように紹介しています。
経済産業省は、我が国の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していく上でのITシステムに関する現状の課題の整理とその対応策の検討を行い、『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』として報告書を取りまとめました。
—
レポートでは、冒頭で将来のデジタル企業の理想像にふれていますが、既存のITシステムが足を引っ張る可能性があるということで、この課題をどう解消するかに焦点が移っています。
そこで「2025年の崖」というキャッチーなワードで危機感をあおっています。
—
レガシーシステムが存在することによるリスク・課題もまとめてあります。
—
対応策として、ユーザー企業とベンダー企業の目指すべき姿と両者の関係性を説いていますが、中心は経済産業省の施策提言になっています。これは経済産業省のレポートなので仕方ないところかもしれません。
その結果、「本来のDXを論じていない」とか「レガシーシステムを何とかすればDXなのかよ」といった反応が出てきた感じですかね。DXの実現と称してAI・IoT・ビッグデータといった技術の活用もブームになりましたが、実証実験にとどまる例もたくさんありました。
この後、経済産業省はDX普及のための施策を順次打ち出してきました。
コロナ禍の真っただ中、DXレポート2が中間とりまとめとして公開されました。
—
このレポートは、前回のDXレポートのふりかえりから始まっています。一定の成果を上げたものの調べてみたら大半の企業がDXできていないことが明確になったと述べています。また前回のレポートのメッセージがきちんと伝わっていないとしています。
そのせいか、今回のDXレポート2は、次のような広範囲な内容を取り上げています。
—
とくに第3章では「企業の目指すべき方向性」「ベンダー企業の目指すべき方向性」をわかりやすく打ち出しています。
—
DXレポート2では、政策提言だけでなく企業のアクションについても説明しています。たとえば、中長期的には協調領域においてデジタルプラットフォーム化を目指すことなどを提言するといった具合です。
—
レポートの本文版では、DXの取組み領域を明らかにするために、DXの各アクションを取組領域とDXの段階に分けて整理したものを、DXフレームワークと呼んでいます。このデジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーションが、DX推進指標で評価する3つの段階となっています。
—
なお、コロナ禍の影響について、DXレポート2では「迅速かつ柔軟に変更して環境変化に対応できた企業と、対応できなかった企業の差が拡大」と述べています。リモートワークが当たり前になったり紙への捺印がやり玉にあげられたりと、多くの人ができるはずないと思っていたデジタル改善が一気に進みました。
「2025年の崖」などとあおらなくても、やればできる企業が存在することが明らかになったのだと思います。
前回のレポートから1年も経たないうちに、DXレポート2.1 追補版が公開されました。前回のDXレポート2で企業の経営・戦略の変革の方向性を示しましたが、変革後の姿について議論を進められなかったので、デジタル変革後の産業の姿やその中での企業の姿、そして企業の変革を加速するための課題や政策の方向性についてまとめています。
—
第2章で、DXレポート2で示した現状をさらに分析し、第3章で今後の方向性を描きだしています。また第4章でそのために必要な政策について整理しています。
—
とくに、第2章でユーザー企業とベンダー企業の現状と変革に向けたジレンマとして、その相互依存関係が低位安定の関係にあり、両者をデジタル競争の敗者にすると指摘しています。
なぜなら、ユーザー企業においては「コスト削減」を達成し、ベンダー企業においては「低リスク・長期安定のビジネス」を実現するという一見Win-Winの関係でありながら、この関係を継続することで両者がともにデジタル時代において必要な能力を獲得できない危機的な状態に陥ってしまうからです。
—
レポートでは、「ユーザー企業であれベンダー企業であれ、この低位安定の構造を認識するとともに、この構造から自ら脱する方策を検討すべき」と述べています。
DXレポートではありませんが、DXを実現するITシステムを構築するための実践手引書が公開されました。
—
実際にDXを実現するITシステムの姿を描写しています。
—
ちなみにHexabaseは、組織内サービスの「業務・基幹システム群」と「各社独自サービス」の構築で活躍しそうです。
という訳で、DXレポートにどんなことが書いてあるか、ざっくりと紹介しました。
これを目安に、自分でもDXレポートを通読してみるといいと思います(とくに本文版)。
では、自社のDXを実現していくとき、このレポートは役に立つのでしょうか?
経済産業省のDXレポートに従うだけがDXを実現する方法ではありません。DXレポートに従うだけでDXが実現するほど簡単でもありません。技術的な難しさだけでなく、経営層の理解力と決断力、デジタル人材の育成・確保も重要になるからです。
しかし、DXレポートに従わないとすると自社の将来像を独自に描きだす必要が出てきます。それを顧客や社員・パートナー企業・株主などに理解・評価してもらうことも欠かせないでしょう。
それなら、DXレポートの提言を一種のスタンダードとして利用するほうが簡単だと私は思います。自社をどのように位置付けるか説明しやすくなりますし、成果が出れば経済産業省の評価制度も活用できるからです。
残念ながら、ITベンダーに丸投げしてもDXは実現できないと思います。自社の競争力の源泉は自分たちで見つけるしかないからです。企業でビジネスを進める人たちが、自分たちの将来像を主体的に描き出し、その実現に取り組んでいくことが何より重要です。もちろん最初からうまくいかないと思いますが、小さく素早く試して学習していくことが実現の近道になるでしょう。
—
こちらで、経済産業省か発表したDX関連資料を時系列でまとめています。