COLUMN

コラム

2025年12月17日

脱「AIっぽい」デザイン!「Claude Skills」で実現する、プロ仕様のUI自動生成ワークフロー

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はじめに:AIデザインの「限界」を感じていませんか?

「AIにデザインを頼むと、なんだか『AIっぽい』仕上がりになる……」
「過剰なグラデーションや、謎の装飾が入って使いにくい……」

最近、UIデザインの現場でこんな声を聞くことが増えました。AIの生成能力は飛躍的に向上しましたが、プロの現場で求められる「統一感」や「ユーザビリティ」を考慮したデザインを一発で出力するのは、まだ難しいのが現状です。

しかし、最新の取り組みとして「Claude Skills(クラウドスキルズ)」と「デザインシステム」を組み合わせることで、この課題を突破する手法が見えてきました。今回は、エンジニアとデザイナーが連携して進める、新しいAIデザイン構築の裏側をご紹介します。

1. なぜAIデザインは「AIっぽく」なるのか?

会議での議論によると、主な原因は「文脈(コンテキスト)とルールの欠如」にあります。

  • 人間の心理の欠如: AIは「なぜその色が安心感を与えるのか」といった心理的背景を完全には理解していません。
  • 定義の曖昧さ: 「かっこいいサイト」と指示しても、AIの学習データにある平均的な(あるいは派手な)「かっこよさ」が出力されがちです。

ここで重要になるのが、「デザインシステム」の定義です。GoogleのMaterial DesignやAppleのHuman Interface Guidelinesのように、色、スペーシング、フォントサイズなどの「トークン(共通変数)」をAIに厳密に守らせる必要があります。

2. 新概念「Claude Skills」とは? エージェントとの違い

そこで登場するのが、「Claude Skills(クラウドスキルズ)」という概念です。

これまでのAI活用(エージェント)は、すべての文脈を読み込んで処理する「司令塔」のようなものでした。しかし、これでは情報量が多すぎて処理が重くなったり、細かい指示を見落としたりします。

  • エージェント(司令塔): 全体を統括し、タスクを振り分ける。
  • スキル(専門職): 「UIデザイン作成」「コードレビュー」「SEOチェック」など、特定のタスクに特化した軽量なモジュール。

MMORPGで例えるなら、エージェントはパーティーリーダー、スキルは「魔法使い」や「戦士」といった個別の能力です。必要な時に必要なスキルだけを呼び出すことで、効率的かつ高精度なアウトプットが可能になります。

3. 実践!「スキルビルダー」でデザインをコード化する

では、具体的にどうやってAIに「プロのデザイン」を教え込むのでしょうか? キーとなるのは、プロジェクト内に設置する .claude/Skills/ ディレクトリと skill.md ファイルです。

手順のイメージ

  1. プロジェクト構成: Next.js + Tailwind CSS などの環境を用意します。
  2. スキルの定義: .claude/Skills/MaterialDesign/skill.md のようなファイルを作成します。
  3. ルールの記述: skill.md の中に、デザインのルール(トークン)や振る舞いを記述します。

記述例(イメージ):

  • ベースデザイン: Google Material Design
  • カラーパレット: ブランドカラー #XXYYZZ をプライマリとする
  • ボタン形状: 角丸 4px、影はなし(フラットデザイン)

このように「スキル」として定義することで、AIはこのファイルを読み込み、「このプロジェクト専用の優秀なデザイナー」として振る舞うようになります。これを「スキルビルダー」と呼び、既存の有名デザインシステムをベースに、自社用にカスタマイズすることが可能です。

4. Figmaとエンジニアリングの融合

もちろん、コードだけでデザインは完結しません。Figmaを中心としたワークフローも重要です。

  • シングルソース: Figma上のデザインとコードを一致させる(デザインシステムを共通言語にする)。
  • コメント機能の活用: エンジニアとデザイナーがFigma上で動作仕様や実装の意図を細かく共有する。
  • 伴走支援: 最終的な「良し悪し」の判断は人間が行う。AIが出したものをベースに、人間のデザイナーが微調整(ブラッシュアップ)を行う体制が、現時点での最適解です。

5. まとめ:これからのデザインワークフロー

これからのUI開発は、以下のように変わっていくでしょう。

  1. 定義する: 人間がデザインの「トーン&マナー」や「ルール(スキル)」を決める。
  2. 生成する: 定義された skill.md を元に、AI(Cloud Skills)がベースとなるUIコード(Next.js/Tailwind等)を自動生成する。
  3. 調整する: 生成されたものをFigmaやブラウザで確認し、人間が微調整を行う。

「AIに丸投げ」するのではなく、「AIにルール(スキル)を与えて、手足として使う」。これが、AIっぽさを脱却し、実用的なプロダクトデザインを生み出すための鍵となります。


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