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クラウドのカギを握るエミュレータ:今さらだけど知っておきたい、なぜクラウドを使うのか1

2020年08月03日

劇的な進化が続くIT(情報技術)では、クラウドの活用が当たり前になっています。企業のITシステムでも利用が広がっています。

でも、クラウドとは実際のところ、何なのでしょうか。そして、「小さな組織」のITシステムに、どんなメリットがあるのでしょうか。ここでいう「小さな組織」とは、中小企業や創業間もないスタートアップ、大きな企業や企業間のプロジェクトを指します。このような小さな組織は、デジタルテクノロジーの活用に共通の課題を抱えています。

そこで、この記事では、クラウドの特徴をあらためて、わかりやすく解説すると共に、小さな組織のITシステムがどんな可能性を秘めているのか、探っていきます。

もう当たり前になっているクラウド

じつは、クラウドは、スマートフォンやWebのアプリで当たり前のように使われています。たとえば、身近なGmailとGoogleカレンダー、LINEやFacebook・TwitterなどのSNS、それに、経理で使っている弥生会計や勘定奉行もクラウドになっています。

このようなアプリには、いろいろなメリットがあります。パソコンやスマートフォンからインターネット経由で操作できるので、アプリに合わせてパソコンなどを用意する必要はありません。それに、実際のデータはインターネットの向こう側に保存されています。手元のパソコンやスマートフォンが壊れてもデータを失うことはありません。買い替えた時も、アプリの再インストールやデータの移行は、ほとんど必要ありません※。インターネットの向こう側にあるコンピュータなのでシステム運用も不要です。

こうしたメリットは、クラウドならではのモノです。

※そんなにうまくできていないアプリもあります。スマホを買い替えたら、アプリの再インストールが必要です。LINEは、トーク履歴の引継ぎに、ちょっと手間がかかります。

テクノロジーの進化

このような進化は、馬車と自動車、宅配便にたとえることができます。
馬車は、人間が運ぶよりは強力ですが、自動車と比べれば、スピードがおそいし、運搬量も限られています。
自動車の登場でそれが大きく変わりました。スピードも速くなり、運搬量も大きく増えましたよね。でも、自社で自動車を保有していると、自分で運転・整備が必要です。ドライバーも雇わなければいけません。トラックを資産として計上する必要もあります。
そこで、現在は宅配便などの運送サービスを使うのが当たり前になっています。自分で運転・整備は不要です。使いたい時に使いたいだけサービスとして利用すれば良いのです。
あなたの会社では、宅配便と同じレベルで効率よく自動車を運用できるでしょうか?

実は、クラウドも同じです。自社でコンピュータを持つよりも、クラウドを利用するほうが圧倒的に効率が良いのです。

クラウドのカギを握る「エミュレータ」

では、クラウドとは一体何でしょうか。そこでヒントになるのが、ゲーム機の「バーチャル・コンソール」です。最近のゲーム機は、昔のゲーム機のソフトがそのまま動きます。これは、最新のゲーム機で古いゲーム機をソフトウェアで再現して、その中で、昔のソフトを動かしているのです。たとえば、任天堂の3DSやSwitchでは、スーパーファミコンやゲームボーイのゲームが、バーチャルコンソールとして遊べます。最新のゲーム機のほうが高性能なので、その中で昔のゲーム機を再現できるんですね。

このような技術を「エミュレータ」と呼びます。ウィキペディアでは、バーチャルコンソールのことを次のように説明しています。

バーチャルコンソール任天堂のゲーム機は、ハードウェア面において基本的に一世代前の機種との互換性しか持ち合わせていないため、ソフトウェア(エミュレータ)を用いて仮想的(バーチャル)にゲーム機(コンソール)を再現して動作させている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

つまり、仮想的にゲーム機を再現して(エミュレータ)、ゲームソフトを動作させるのが「バーチャルコンソール」なのです。

業務システムで活用される仮想化技術

業務システムでも、このエミュレータのような技術を使っています。厳密には、「エミュレータ」ではなく「仮想化技術」(バーチャライゼーション)と呼んでいます。仮想化技術には、いくつかの種類があり、そのうちの一つの形態が「エミュレータ」です。最近は、「コンテナ」という仮想化技術が主流になってきました。

業務用ITシステムに使われるコンピュータを、「サーバー」と呼んでいます。コンピュータのサーバーは、ネットワーク経由でいろいろな処理(サービス)を行ってくれるコンピュータのことです。コーヒーサーバは、コーヒーを提供してくれます。ウォーターサーバーは、おいしい水を提供してくれます。それとよく似た関係です。

Webサイトを提供するサーバーが「Webサーバー」で、ファイルを保管してくれるのが「ファイルサーバー」、ネットワークを経由してプリンタで印刷できるのが「プリントサーバー」です。

最近のサーバーは高性能なので、仮想化を使って、ひとつの物理サーバーで、バーチャルなサーバーを複数実行できます。複数の物理サーバーを1台のバーチャルなサーバーに見せかけることもできるんです。

そのおかげで、1台のサーバーで複数の業務システムを提供したり、複数の物理サーバーを束ねて、ハードウェアの一部が故障しても、自動的にそこを切り離すこともできます。

この仮想化が、クラウドの基礎技術になっています。クラウドを利用すれば、自社で用意するIT環境とは、まったく違った世界が広がっています。

次回の記事では、クラウドについて、さらに詳しく見ていきましょう。

参考資料

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