2023年06月28日

企業のデジタル対応力を評価するDX推進指標とDX認定制度 - 認定の取得手順からファイナンス上のメリットまで具体的に解説

カテゴリー:新規事業開発

タグ:DX, 基本用語

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これまでアナログな方法で実施してきたビジネスや業務を、デジタル技術を活用したものに移行していくDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっています。

「すでに取り組んでいる」「取り組みたいと考えている」という企業も多いと思いますが、成果がなかなか上がらないという声も聞こえてきます。

こうした状況を打破するため経済産業省は数多くの施策を推進しています。そのうちのひとつがDX推進指標とDX認定です。認定事業者は「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」(DX-Ready)とされ、自社をアピールしたり、公的な支援措置を受けることができるメリットの多い施策です。

今回は、このDX推進指標とDX認定について具体的に解説します。IPAが、Youtubeで3分ほどの解説動画を公開しているので、まずはこれを見ても分かりやすいですよ。

◎IPA:DX何からはじめよう DX推進指標ってなんだ?

なお、この記事は2023年06月現在の情報に基づいています。

DX推進指標とDX認定とは何か

DX推進指標」は、経営者や社内の関係者がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するものです。

DX推進指標は、一種のチェックリストです。企業がデジタルを活用して自らを革新していけるかどうか、次の観点から評価します。

◎経済産業省:「DX 推進指標」とそのガイダンス より

項目は、大きく2つに分かれています。

  1. DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
  2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標

項目を見ると分かるように、企業運営にデジタル対応を具体的にどう取り込んでいるかを評価する内容になっています。このチェックリストを「デジタルガバナンス・コード」と呼んでいます。

そして、このDX推進指標で一定レベルに達していることを認定するのが、経済産業省が推進する「DX認定制度」です。国が策定した指針(デジタルガバナンス・コード)を踏まえて、「デジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」(DX-Ready)になっている事業者を認定します。

経済産業省の外郭団体である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、「DX認定制度事務局」として各種相談・問合せ対応及び認定審査事務をおこなっています。

DX推進指標とDX認定との関係は、次の図を見ると分かりやすいでしょう。

◎経済産業省:DX認定制度概要 ~認定基準改訂及び申請のポイント~ より

DX推進指標とDX認定の普及状況

IPAは、DX推進指標の普及状況を「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」として公開しています。

すでに、自己診断に回答した企業は3956件になっており、全体の9割以上を中小企業が占めています。過去に回答していたり2年連続提出していたりと継続的に回答した企業は、成熟度の平均値が高い傾向にあることや、年々向上しており、着実な進展がみられるとしています。

◎IPA:DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022年版)速報版 より

また、DX認定事業者は、次のDX推進ポータルでも公表されています。自分の知っている企業が入っていないか確認してみては如何でしょうか。

DX推進指標とDX認定のメリット

では、DX推進指標には、次のメリットがあります。

  1. 認識を共有する
  2. DXの推進に向けて、なにをしたらよいか明確にする
  3. 去年に比べてDXは進んだのか、進捗を把握する

さらにDX認定を受けることで、「日本政策金融公庫による融資」や「中小企業信用保険法の特例」といったメリットが受けられます。

  • 認定事業者は、認定事業者一覧としてIPAのホームページで公表される
  • ロゴマークを利用できる
  • 各種支援措置が受けられる

◎経済産業省:DX認定制度概要 ~認定基準改訂及び申請のポイント~ より

経済産業省の「DX認定事業者アンケート結果」によると、「DX戦略策定・推進の一環」や「顧客に対する企業イメージ向上」のために取り組む傾向が強いとしています。

◎経済産業省:DX認定事業者アンケート結果 より

これらの情報は、経済産業省のDX認定制度のWebページで確認できます。

DX推進指標の自己診断手順と主な内容

では、DXの現状を把握する「DX推進指標」とは、どんな内容なのでしょうか。経済産業省が公開している「DX推進指標とそのガイダンス」という資料では、DX認定を新規申請に向けた準備を次のように説明しています。

◎経済産業省:DDX認定制度 申請要項(申請のガイダンス) より

ここでは、「経営ビジョン」「DX戦略」「サイバーセキュリティ対策」などの策定と推進を求めています。DX推進指標は、こうした取り組み状況を把握するものなのです。

IPAは、DXに関する情報を発進するポータルサイト「DX SQUARE」を運営しており、ここで自己診断の手順を分かりやすく解説しています。

自己診断には「自己診断フォーマットver2.3」というExcelファイルを利用します。このシートに必要事項を入力して自動診断できるのです。たとえば「ビジョンの共有」という項目は次のようになっています。こういった約20ページのアンケートに回答すると、診断結果が表示されます。

◎DX推進指標:自己診断フォーマットver2.3 より

そして、この診断結果をDX推進ポータルから提出すると、比較対象となるベンチマーク資料を入手できます。

DX認定を取る方法

DX認定の申請は、次の流れでおこないます。

  1. 「認定申請書」および「申請チェックシート」「補足資料」を用意する
  2. DX推進ポータルから申請する

審査期間は約60日です。詳しい手順は、経済産業省「DX推進指標とそのガイダンス」で説明していますが、情報が分散しており把握に手間がかかる場合もあるので、DX推進指標とは ~DX推進における「健康診断」~|DX SQUARE にアクセスするといいでしょう。

今回は、DX推進指標とDX認定について具体的に解説してきました。

「デジタル活用の重要性は理解しているけど、何からやればいいか分からない」
「デジタル活用を推進しているけど、どのような立ち位置になるのかはっきりしない」

こういった企業にとって、役立つ施策だと思います。

「まわりにDX認定を受けた企業なんていない!」という場合もありますが、他に先んじて新たな取り組みを進めてアピールするチャンスでもあります。

ぜひ、、DX推進指標とDX認定に取り組んでみてください。

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