2022年10月6日

DXコラム:データから見る、DXによる開発需要と人材不足

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日本のSIビジネスは、大きな市場規模を誇っている。今回は、SIビジネスの市場動向をデータに基づいて見ていこう。

おさらい:情報サービス産業の規模と変化

SIビジネスが属する情報サービス産業の市場規模は、2021年情報通信業基本調査(2020年度実績)によると、2020年度売上高で18兆7928億円となっている(*1)。自動車・鉄鋼・エレクトロニクスなど日本の他の基幹産業と比べても遜色のない規模となっている。このうち、受託開発ソフトウェア業と情報処理サービス業で約71%を占める。

売上高の推移は2016年度から2019年度までは微増してきたが2020年度は前年度比1.1%減となった。デジタル活用が競争力の源泉となる昨今、DXブームや自治体のデジタル化などの需要から、この規模は維持されていくだろう。

情報サービス産業の規模と変化

*1 2021年情報通信業基本調査(2020年度実績)

慢性的な人材不足が続く

一方で、SIビジネスの課題は慢性的なIT人材不足だ。

2022年5月の日経新聞に「IT人材難、低賃金が拍車 求人倍率10倍」という記事が掲載された。この記事の元になっていたのが、大手転職情報サイト「doda」の新規求人倍率データだ(*2)。

この求人倍率データ(職種別)によれば、「エンジニア」(IT・通信)は、8~10倍と他の職種を大きく引き離している。転職情報サイトという情報の偏りも考えられるが、エンジニア(機械・電気)の求人倍率よりも圧倒的に高い。

日本社会全体で労働人口の減少が指摘されて久しいが、IT人材不足はこれに加えて、シス
テム開発自体の大きなニーズにより引き起こされているのだ。

職種別 – 転職求人倍率レポート

*2 dota – 転職求人倍率レポート(データ)

SIビジネスに何をもたらしたか

こうした大きな需要と慢性的な人材不足から、次のように大きく3つのビジネスモデルが展開されてきた。

  1. エンジニア派遣ビジネス
  2. 既存顧客向けシステム開発ビジネス
  3. ITシステムソリューションビジネス

まずは、エンジニア派遣ビジネスだ。実際、人材派遣やSESを手がけているシステム開発企業は多い。厚生労働省が公開している「働き方・休み方改善ハンドブック」ではアンケートの結果として「客先常駐をしている企業の割合は、全体の9割を超えています。また、客先常駐しているITエンジニアの比率が7割を超えている企業は28.8%となっています」と紹介している(*3) 。

客先常駐しているITエンジニアの比率

*3 厚生労働省: ITエンジニアが働く職場の現状(PDF)

2013年のデータではあるが、現在もこれに近い状況だろう。旺盛なエンジニア需要のもとでは、エンジニア派遣ビジネスが成立しやすいからだ。しかし、エンジニアの立場から見れば会社や仕事への忠誠心は低くなる。どの会社に属しても同じになってしまうのだ。オフショアの活用という方法もあるが、オフショア先の経済成長と円安傾向から中長期では活用が難しい。

2番目のビジネスモデルは、特定のお客様に寄り添ってその課題を解決していくものだ。特定業種や業務・地域に密着して、デジタル活用をサポートしていく。一種の御用聞きビジネスだ。しかし、売上の拡大は、相手がどれだけ成長するか、エンジニアをどれだけ集められるかに依存してしまう。

3番目のビジネスモデルは、技術的な課題の解決策を提供するものだな。これが、SIビジネスの本来の提供価値になる。ネットワークやデータベース・セキュリティ・大規模システム構築など、とがった技術が求められる場面は多い。

実際のところ、多くの企業がこの3つを組み合わせてSIビジネスを展開している。根本的なエンジニア不足は解決されないのであれば、いずれもエンジニアにとって魅力的な会社を作っていくことが重要かつ不可欠になるだろう。

感覚的に把握していたところもあるだろうが、具体的なデータから見ていくと、あらためて整理できるのではないだろうか。

では、クラウドファースト時代にこうしたビジネスモデルがどう進化するのだろうか。

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